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不思議な災難

「卓也~。いつまでここにいるの?」
ここは、県内に数店あると言われるフィギュア専門店。
店前で中にいる男性に声をかけている少女の名は“彩花”。
彼女の彼氏である男性“卓也”に連れられ、このフィギュア専門店を訪れていた。
卓也はテニス部に在籍しており、顔も二枚目。女子には優しく、いつも笑顔を絶やさない。学校でもモテモテの存在だった。 そんな彼にやっとの想いで告白し、OKを貰った。彩花は、今の今まで小躍りしたくなるような気分だった。だが、

なんで初デートがフィギュアショップ?
正直に言ってかなりショックだ。別に彼がオタクであったことがショックであった訳ではない。…多分。
このような店は大抵一人で来るところじゃないの?
卓也がこのような趣味があったことよりもそのデリカシーの無さ。それには結構ショックだった。

「はぁ…」
彩花はあからさまな暗い顔でため息をつく。そして、卓也を見る。彼はこっちを見ていない。
彼は店の棚に並べられたアッチ系の人形を部活をしているとき以上に真剣なまなざしで見つめている。時々手に取り、角度を変えたりもしている。あ、今人形のスカートの中覗 きやがった。
ここは、怒ってる素振りを見せたりした方が良いのだろうか?
良いに決まっている!
彼女を置いてきぼりにしてフィギュアに走る男など最低だ!……なんて言ったら初日から私の恋愛は破綻しちゃうだろうしな…。
せっかく皆の憧れの星を手に入れたのにそんな勿体無いことなんてできそうにない。何より何かに真剣に取り組んでる卓也の姿はやっぱりかっこいいし好きだ。…今彼が見つめているのは人形のスカートの中だけど。

「君。そこに立ってると邪魔なんだけど?」
腕を組みうんうん唸りながら彩花が考えていると、彼女の後ろから野太い声が聞こえる。リュックを背負い、ロンゲでメガネでバンダナ。額からはもうすぐ春だというのに多くの水滴を侍らせている。匂いでそれが汗だというのは一目瞭然でだった。
彩花は、すみませんと一礼するとその男性に道をあける。男性はこの店には女性客があまり来ないのだろうか、珍しそうに彩花を見つめる。

「将来、卓也もああなっちゃうのかなぁ…」
折角明るくなりかけてきた気分が灰色に戻る。よし、さっさと卓也を連れ出してどっかショッピングにでも行こう!

彩花は両手で頬をパチンと軽く叩くと店に入る。

 
店は彩花が思った以上に広く、多くの人形が至る所に置かれていた。

これらの人形は何らかのアニメや漫画のキャラクターなのだろうか?

彩花はガラスの棚置かれた人形を歩きながら眺めていく。


昔はこう見えても結構アニメや漫画は大好きな人間だった。龍の玉を集める漫画くらいまでだったら少しは分かる。だからひょっとしたら自分の知ってる人形があるかも。
そうすれば卓也と話が合い、こういう場所に来るのも苦痛じゃなくなる…。
よし
意を決した私はとりあえずさっき卓也が見ていた場所から自分の知っているキャラクターの人形がないかどうか探し始めた。

数分後
よくよく考えれば私が知ってる訳ない。だって、卓也がさっきいた場所は“恋愛ゲーム”のコーナーだ。
「はぁ…」
また、ため息。あと何回ため息をすることになるのだろうか?
私はとぼとぼと、一応売られている人形をチェックしながら店の奥に進む。


「魔女少女コーナー…か」
奥に進んだ彩花はふとそのコーナーの場所に目をやる。魔女っ子ものなら小さいときに見てたから理解できるかも。そう考え、さっき以上にいろんな場所に目を配る。
「あ、これ知ってる!!」
彩花は棚の一番上に置いてある、人形を見つけるとそう言う。
「確か幼稚園のころに見てたやつだ。懐かしいなぁ…」
取って細部を見たくなった彩花は、彼女の身長では人形の棚に届かないので何か踏み台になりそうな物を探す。
「えっと台、台っと…」
店のさらに奥に進んでいくが何もない。諦めてもよかったのだが彼女の性格ゆえやっきなって探していく。
だいぶ奥まで進み、ようやく台になりそうな物を発見する。
「あ~、よかった。よかった」
彩花はそう言って、台を抱えようとする。だが、ふと、その隣にある棚に目をやる。
そこには、今までと同じように棚に多くの人形が置かれている。
だが、そこの棚には『~コーナー』という札がない。それと、
「うわぁ~。凄いリアル…」
そこにある人形らは今まであった人形とは出来の具合が明らかに違っていた。一体一体丸い台の上でウィンクしたり、微笑んだりとポーズを決め、プラスティックのように光沢を放っているのに何故か人間らしさを感じ、嬉しそうにしているその瞳はどういう訳か何かを訴えかけているようにも感じられた。
コーナー名がないのは恐らくここには最上出来の人形が設置されているからだろう。
その証拠にここにある人形はさっき言った通り素人が見てもわかるようにリアルだし、一応大半が小学生くらいの女の子を模しているが、服装に関して言えば統一性はほとんどない。
彩花は一番目の前にある人形に目をやる。
「魔女っ子チーターちゃん…か。うわぁ、二万円もするんだ!」
人形の前に置かれている値札を読む。
その人形は片手にステッキを持ち片足を曲げ、フリフリのドレスのようなコスチュームをなびかせ、にっこりと笑いながら見つめている。
「どのくらい重いのかな?よっと……あれ?意外と軽いんだ…って、あ!!?」
彩花は店内を歩き回ったせいか、手は手汗まみれになっており手にもった人形を滑り落としてしまう。
コトンッ
……………
「…誰も見てないよね?」
辺りをキョロキョロと見渡す。人形を見た感じどこも壊れていないようだ。ほっと胸をなで下ろす。
危ない、あぶない。二万なんて大金払えきれないしね。もう、商品には触れないほうがいいかな。
彩花は横倒しになっている人形を掴もうと手を伸ばす。

…ピカァーーー

「え!? なに?」
突然床に落ちている人形が光沢を放ちはじめる。そして、その光は徐々に大きくなり人の形を形成していく。
そんな目の前の光景に彩花は腰を抜かしてしまい、ただ呆然と見ているしかなかった。
やがて光が消え、その全貌が明らかになる。
それは、一人の小学生くらいの少女であった。人形が着ていた物とまったく同じコスチュームを身にまとい、髪型、顔等人形をそのまま大きくしたような感じだった。
カランッ
人形を支えていた青くて丸い台がその少女の前に転がり落ちる。

「うっ…あ、あれ?」
少女は目を開くと周りをキョロキョロと見渡す。
目の前の出来事に騒然となる彩花。はっと我に帰り、恐る恐る少女に問い掛ける。
「…え、あ、あの、そのぅ…あなたは一体…?」
「!!!?」
彩花の存在に気づくと少女は怯えた顔で後退する。
「い、いやぁ…。いやあああああ!!」
突如、立ち上がり出口に向かって走っていった。
最初は呆然としていた彩花だが、すぐに立ち上がり少女の跡を追おうとする。
「ねえ、ちょっと待ってよ!」
カシャ
「?」
何かを踏みつける。さっき人形の土台であった小さな丸い台だ。
ピカアァーーーー
突如彩花の周りをその光が取り囲み、彼女を包み込んでいく。
「え?ちょっと…、い、いやあぁ!!」


「他に何か良品はありませんか?俺、もっとしっかりとした作りのがいいんすよ」
卓也はこの店の店員に執拗に食い下がっていた。彼女を待たせてまでこの店にいるのだ。重要な時間を浪費してしまった分、せめて納得いくものを買って帰りたかった。
コトッ
ん?
何かを蹴飛ばしたようだ。卓也は足元を見る。横倒しのフュギュアが落ちている。
「ったく。落としたら落としたでせめて元の場所に戻していけよな…」
卓也は落ちていたフィギュアを手にとり、適当な場所に置こうとする。
「…これ」
卓也は手に持ったフィギュアに目をやる。
おそらく自分と同じ歳くらいの女性を模したものだろう。何のアニメのキャラかは知らんがおそらく相当なものだろう。
活発で元気そうな笑顔でこちらを見つめ、見ているだけで心が落ち着く。そう。まるで
「彩花ちゃんにそっくりだな。よし、これに決めた!」
卓也はそのフィギュアを持ったままレジに向かって行った。

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