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怪人 ~クリスマス編~

俺が何のためにこの場所に来たかと言う疑問を浮かべる人間が居るとして、その答えをその人自身が出そうとすれば実に様々な憶測がたつと思われる。
俺がこの場を訪れた時間帯、性別及び容姿。どれをとっても俺がこの場にいるのに不釣り合いであるのは言うまでもない。
今日は1年に一度のクリスマス・イブ。
場所は子供たちに大人気の建物の前。そう、それはおもちゃ屋。
町を除けば某大型おもちゃ屋には溢れんばかりの人間。
この国では、本番の25日。クリスマスよりもこっちのイブの方が盛り上がりを見せている。聖夜だとか。
無論、俺にはそんな事どうだって良い。
俺には聖夜を共に過ごす人間はいない。
別にもてないと言う訳ではないことは、これを御覧の皆さまはお分かりだろう。
仮に居たとしても数分後には、俺の隣から消え失せてしまっているだろうし。
そっと、その大型おもちゃ屋を見てみる。
楽しそうに微笑む両親に、胸に大きな玩具を抱きながら喜ぶ子供。
最近の時代はゲームとかが、多いようにも聞くが、やはり子どもとしても親としても大きいものの方がインパクトも大きいし、喜ぶのだろうか。
だが、今プレゼントを持っているということは、この家族はあの髭オジイサンの事を信じていないのだろうか。…家族と言うのは訂正しよう。あの子供は。
まぁそんな家族のことはどうでも良い。
その家族の容姿は並みの下。
俺が、遊ぶに値しない。よって俺の興味はその家族から削がれる。
ここにいる人間は裕福そうな人間ばかり。
こいつらは、今日の飯さえまともに食えない者の事なんて所詮考えたこともないのだろう。
今すぐ全員雪にでも変えて、この夜空を彩らせてやりたいが生憎、そんな気は起きない。
理由は言ったとおり、ここにはそれに値する人間はいない。
ここにはいない。
取りあえず店の中に入ってみるか。

ガキどもが群がるゲーム売場を後にし、そのまま道をゆっくり進んでいく。
知っていると思うが俺も男だ。
男より女の方が興味が惹かれる。
足をゆっくり動かし、某有名ドール等が置かれるコーナーまで辿り着く。
俺の隣を横切る女性はみな不審な目で俺を見つめる。
当然だろう。
俺はどちらかと言えば身長も高い。
自分で言うのも何だが、男としての容姿は悪い方ではないし、もてない訳ではない。
だが、例外も多々あるのかもしれないが、やはりこの場に男というのは非常に不釣り合いなものなのだろう。
俺も外部から見ていたら冷やかな視線を送っていただろう。
また一人、俺の隣を横切った女性が不審な眼差しを送る。
子持ち。子供の年齢から考えて結構な年なのかも知れないが、そうは見えないほどの可憐さ。
子供を連れていなかったら、二十歳くらいに見えるかもしれない。
俺は興味を惹かれ、その女を追う。
子供は二人で姉妹。
妹は小学生低…中学年くらいだろう。姉は中学か小6くらいに思える。
俺は貴族といえるほど金持ちではないが、そう言った人が考えそうな思考を行っている。
遊び、道楽。
俺の容姿から考えれば、道楽といえば町辺りで派手な格好をしつつ、友人らとストバスなんかをしてそうな感じもする。
だが、俺の道楽はそんな有り触れたものではない。
俺の道楽は、人が人で遊ぶ。
これほど愉快で面白い道楽は存在しないだろう。
自らの考えが、非人道的であるのは確定しているにも関わらず、俺自身の頭の中でそれを人道的考えに無理やりこじつけて優越感に浸る。
最高に愉快だ。
…俺が何を言っているか分からないだろう?
実際に見てもらったほうが早いな。この文章を今読んでる皆もこの後の展開に大いに期待しているだろう。
今日はその希望にできる限り答えてやるとするか。
再び、さっきの家族に目をやる。
俺のことなど忘れているのだろう。別に気遣われるほどの行いはまだしていないが。
おそらくは妹か、それのプレゼント選びに真剣に取り組んでいる。
「良く考えて選ぶのよ。二人で一個だからね」
前言は撤回しよう。二人で一つだそうだ。
この不況だから仕方ないのかもしれない。
「あたしこれがいい!!」
「えぇ~、こっちの方がいいって…」
姉と妹の口論。まぁそんなキツイものではない。
最後はやはり姉、つまり年上の気遣いとでも言うべきか、彼女が妥協し妹が望むもので決着はついた。
今流行りのドール。
二人はそれを母の元へ持ちより、嬉しそうに渡す。
なんだかいとも簡単に決まってしまう。
だが、あの家族。肝心なことを忘れていないだろうか。
人形は一つ。
ゲームじゃないんだ。一個の人形じゃ、割合が合わな過ぎだとは思わないのだろう?
この先の末路は見えている。
妹が人形を独占し、姉は結局プレゼントを貰えずじまい。
それは流石に可愛そうではないだろうか。
ここで俺の道楽的憐れみが発動する。
こういった事を考えるのはなかなか楽しい。
ドンッ
背中に軽い衝撃が走る。
俺の足もとに感じる感触。これから察するに何かが俺にぶつかってきたようだ。
そっと振り返って見てみる。
先ほどの姉妹と同じぐらいの年齢の少女。
俺はロリコンではないが中々の可憐さをもっている。
「あ、ごめんなさい…」
俺にぶつかった事に今気づき、少々怖がりながら詫びる。
俺の顔はそんなに怖いだろうか?
もしそんな懸念があるのであれば、振り払ってもらおうと思い、俺は少し微笑み気にしないでと言う。
それを聞いた少女は少し落ち着く。怒られるとでも思っていたのだろうか。
「ところで、君はプレゼントを買いに来たの?」
「うん!」
「誰と?」
「お母さんとお父さん!!」
少女は奥で談笑している老夫婦を指差す。
「そうか」
それを確認した俺は
「じゃあお譲ちゃんにはお人形になって貰おうか」
右手の人差し指を少女のデコに触れさせた。
「え?……あ」
少女は俺の指が触れた瞬間、虚ろな表情になりその場に立ったままになる。
周りの人間はそんな俺らの様子を微塵も怪しいなどと疑っていない。これも“∞”の力だ。
俺はそっち目を閉じ、集中する。
指先を通して、この少女の形体を変換していく。
…子供が欲しがるような可愛らしい物がいいだろう。綿で出来た…
数分間、作業を続け
「変換完了」
少女のデータを変換した。
すると少女の身体がうっすらと桃色の光沢を帯び始める。
そして、それは全身を覆っていき、さらに強い光を放っていき、徐々に小さくなっていく。
やがて光が店に置いてあるアンティークドールのような形体になると、光は徐々に薄れていく。
クリスマスのプレゼントには相応しい、素的なヌイグルミの完成だ。
床にあるその人形を手に取り、ついた汚れを軽く落とす。
これは商品じゃない。
俺が作ったものだ。
だからこれをあの姉妹にあげても文句はないだろう。
確かレジの方へ向かったはずだったな。
俺はその人形を掴んだまま、レジの方向へ向ってやや早歩きで歩き出す。
だが、この早歩きが少々まずかったようだ。
こんなひと言うことで人も多かったため、当然混雑している。
丁度俺がその家族を発見したとき、正面からオバサンたちの集団がやってきた。
それを避けるために端の方をすり抜けようと試みたのだが、奈何せん隣に綺麗にデコレイションされたクリスマスツリーがある。
それに少しぶつかり、そのツリーについていた飾り付けが落ちる。
「あっ!?」
しかも最初それに気付かず見事に踏みつけてしまった。
…まいったな。
だが、俺がこんな事態に陥ってもあの家族は俺を気にも留めない。
まあ俺がそうなったのを知らない可能性もあるのだが。
取りあえず踏みつけた飾りを見る。
金色に輝く綺麗な小棒がいくつか。ひぃ、ふぅ…3つか。
綺麗にパキっと折れてしまっている。飾り付けの道具としては少々脆かったようだ。
「よわったな…」
これは弁償したほうがいいのだろうか。
今日客が多いせいか、俺がしたことに客及び店員はまったく気づいていない。
このまま帰っても多分誰も気づかないだろう。
ふと、あの家族を見てみる。
いつの間にか父親とも合流している。なるほど、あの親にしてこの子ありか。
母親も相当若く見えているが、父親もかなりのイケメンだ。
だがそんな事、今はどうでもいい。
俺のさっきまでの善意に報いてもらおう。
レジに並ぼうとする家族の元に走って向かう。
楽しそうに家族で談笑を楽しんでいる。
足りないのは三つ。なら…女性辺りが好ましいだろう。母に姉妹。丁度3人。
都合が良い。
俺はその楽しむ3人の首元を通りながらささっと触る。これでこの3人は俺の思うがまま。
軽く念じ、3人を宙へ浮かせる。
「でね…え?」
「な、なにこれ!?」
姉妹に母親。それぞれの体が宙へと浮かぶ。3人は突如の出来事に慌てふためく。
だが、そんな様子を見ても、店内の人間は誰一人として気付かない。
彼女らの父親もそんな彼女らの様子にまったく気づかない。
その様子もまた良し。
「お父さん!お父さん!!」
「誰か助けて!!」
「…う、うわーん!!」
泣き出す妹。さすがに可哀そうになってきたな。早く物にしてやろう。
「「「……あ」」」
突然3人は呆けたようになり、空中で動きを止める。
やがて、3人の身体が動き始める。
手を頭の上で組み、頭上に輪ができるようになる。そして両足はしっかりと伸ばした状態へとなる。
そしてさらに念じると、徐々に3人の体は小さく、小さくなっていき、やがて手のひらサイズまで縮む。
何かの支えを失った3体は床にポトリと落ちる。
その場に行き、その3体を拾い上げる。女性を模した3体の小さな飾り。
さすがにこれでは味気ない。
さっとそれらに手をかざし、また念じると一瞬にして材質が変化する。
金色になり、見事な光沢を放つ黄金の飾り。
これこそまさに、飾りにふさわしい。
それらを持って、先ほどのツリーに飾りつける。
頭上の輪の部分があるため、綺麗につけれる。
3人仲良くクリスマスを迎えて欲しいが、同じ飾りが同じ場所に集まっては不釣り合いだ。
残念だが、イルミネーションのため別の場に配置しなければ。
3つをそれぞれ合いそうな場所に飾り付ける。
我ながら会心の出来。
まあ、よく遊んだし今日はここで帰るか。
……あ、あの縫い包みどうしよう?
帰り際にヌイグルミ売場があったな。
そこにでも置いておくか。
おれはヌイグルミをその場に放り投げ、寒空へと帰っていった。

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